【建築のひとコマ⑫】駅前の空き店舗に、高校生のコンビニが出来た

こんにちは!長野で注文住宅・デザイン住宅を手がけている「ALOHA100」設計の中澤です。
建物の形や納まりに隠れた工夫を、設計を学んだ視点から紹介する「建築のひとコマ」。
今回は、長野県茅野市にある「ヤツガタケマート」の紹介です。

以前はコンビニとして親しまれ、閉店後はしばらく空き店舗になっていた場所。

そこに新しい看板が現れたと思ったら、なんとお店づくりと運営の中心を担っているのは、地元の高校生たちでした。

茅野駅は、通学する高校生や、八ヶ岳方面へ向かう人たちが行き交う場所です。

駅前で飲み物や食べ物を買えるお店がなくなり、「ここにコンビニがあったら」と感じていた人もいたはず。

その声に応えるように、2025年春、ヤツガタケマートがオープンしました。

外観を見ると、角地に面したガラス張りの店先は、以前からコンビニが入っていた建物の形を生かしています。

一方、看板には八ヶ岳を思わせる山並みが描かれ、窓には「高校生が頑張って営業中!!」の文字。

見慣れた駅前の一角が、新しいお店の顔になっていました。

店内に入ると、お弁当や飲み物が並ぶ売り場の一角に「YATSU cafe」があります。

レジまわりには木を使ったカウンターや手書きのメニューがあり、一般的なコンビニのレジとは少し違う表情です。

特に気になったのは、通りに面した長い窓際の席でした。

外を眺めながら飲み物を飲んだり、電車を待つ間に少し休んだり。

商品を買ったあとも、店内にいられる場所が用意されています。

窓際に席があることで、座っている人は街の様子を眺められ、通りを歩く人からも店内の気配が見える。

ガラス一枚を挟んで、店と街がつながっているように感じました。

売り場には、日用品や食べ物のほかに、鳥をかたどった小さな雑貨も並んでいました。

山岳観光都市、茅野だからこその商品なのかもしれませんね。

コンビニに入って、こんな品物に足を止めるとは思っていませんでした。

商品棚に添えられた手書きの案内にも目が留まります。

さらに進むと、チップスターの棚には、思わず読み返したくなるポップが。

整った売り場の中にこうしたひと言があると、並んでいる商品まで少し違って見えてきます。

棚やレジ、窓際の席という空間のつくりに、商品や手書きの言葉が加わる。

店内を歩くうちに、ここがただ品物を置いただけの場所ではないことが伝わってきました。

店内には「ギフトチケット」の掲示板もありました。

大人が購入したチケットを、18歳未満のお客さんが使える仕組みです。

並んだチケットには、それぞれ手書きのメッセージが添えられていました。

店をつくるのは、内装や家具だけではありません。

ここで何を売るか、どんな言葉を添えるか、訪れた人がどう関われるか。

そうした日々の積み重ねも、場所の雰囲気をつくっていきます。

今回訪れて印象に残ったのは、閉じていた駅前の店舗に再び明かりがつき、店先から中の様子が見え、人が立ち寄れるようになっていたことです。

高校生たちの挑戦は、空き店舗に新しい使い道を与えました。

そして、この場所がこれからどんなお店になっていくかは、つくる人や訪れる人によって、少しずつ変わっていくのだと思います。

茅野駅前の見慣れた一角に現れた、ヤツガタケマート。

建物は使われてこそ、街の風景になるのだと感じたひとコマでした。