【建築のひとコマ⑥】開放感の代償は暑さ?ガラスに包まれたガレリアかめおか

こんにちは!長野で注文住宅・デザイン住宅を手がけている「ALOHA100」設計の中澤です。
建物の形や納まりに隠れた工夫を、設計を学んだ視点から紹介する「建築のひとコマ」。
今回は、京都府亀岡市にあるガレリアかめおかです。
道の駅として利用されている一方、館内にはホールや研修室、創作室などが入り、地域の生涯学習拠点としての役割も担っている複合施設です。
設計を手掛けたのは、建築家・池原義郎。
1998年に竣工し、2000年には第41回BCS賞を受賞しています。

建物の外観でまず目に入るのが、横方向へどこまでも伸びていく大きなガラスの壁です。
コンクリートの重厚な基壇の上に、透明な箱が載せられているような姿。
外からでも、ガラス越しに館内の構造体がうっすらと見えています。
道の駅と聞いて想像する建物とは、ずいぶん雰囲気が違います。
しかし、この建物の本当の迫力が伝わってくるのは、中へ入ってからでした。

館内の中心には、細長く伸びる巨大な吹き抜け空間があります。
天井が高いだけでなく、両側の壁もほとんどがガラス張り。
建物の中にいるはずなのに、外部空間へそのままつながっているような開放感があります。
左右にはさまざまな施設が並び、その間を大きなアトリウムが貫いています。
単なる玄関ホールというより、建物の中につくられた一本の「街路」のような空間です。

この大空間を支えているのが、規則正しく並ぶ淡い白色の鉄骨です。
床から立ち上がった太い柱は、途中から枝分かれするように屋根へ伸び、反対側の柱とつながっています。
一本一本を見るとかなり大きな部材ですが、同じ形が一定の間隔で繰り返されることで、不思議と圧迫感はありません。
むしろ、木々が並ぶ並木道や、大きな森の中を歩いているようにも感じられます。

斜めに交差する部材は構造として屋根を支えるだけでなく、アトリウム全体に強い奥行きを生み出しています。
視線の先へ向かって鉄骨が何重にも重なり、どこまでも続いていく。
構造体を天井裏へ隠すのではなく、空間を構成する主役としてそのまま見せている建築です。
屋根には立体トラスが用いられ、柱や斜材と一体になって、この長大な吹き抜けを覆っています。
細い部材を立体的に組み合わせることで、大きな空間を支えながら、屋根そのものを軽やかに見せています。

さらに印象的だったのが、床に使われているレンガ調の仕上げです。
鉄とガラスで構成された無機質な空間でありながら、足元には温かみのある色が広がっています。
外部の広場にも見える床、頭上を覆う大屋根、両側に並ぶ部屋。
こうして見ると、やはりここは「大きな建物の中」というより、「ガラスの屋根を架けた街路」と考えたほうが近いのかもしれません。
雨の日でも人が集まり、歩き、立ち止まり、催しを開ける。
用途を細かく決めすぎない大きな余白が、この建物の中心につくられています。

ガラスの壁を近くで見ると、それを支える仕組みもよく分かります。
大きなガラス面は、壁いっぱいに太い枠を巡らせるのではなく、金物やロッドによって細かく支持されています。
構造が完全に消されているわけではありません。それでも、部材をできるだけ細く見せることで、視線が外の景色まで抜けていきます。
この納まりがあるからこそ、巨大なガラス面でありながら、重たい「壁」ではなく、薄い透明な膜のように感じられるのでしょう。

ここまで見ると、明るくて開放的で、とても気持ちのよい建築です。
……と言いたいところなのですが、実際に歩いてみて最も強く感じたことがもう一つあります。
とにかく、暑い。
訪れたのは8月のよく晴れた昼間。
大きなガラス面から日差しが入り、床にはくっきりと光と影が落ちていました。
景色としてはとてもきれいです。
しかし、ガラスの近くを歩いていると、外からの熱がじわじわと伝わってきます。
天井が高く、これだけ大きな空間を丸ごと快適な温度に保つことも簡単ではなさそうです。

もちろん、ガラス張りだからこそ、この建物の開放感は生まれています。
外の緑や空を取り込み、閉鎖的になりやすい大規模な公共施設を、明るく親しみやすい場所に変えている。
ガラスは、この空間を成立させるために欠かせない要素です。
その一方で、光を取り込むということは、太陽の熱も取り込むということ。
特に真夏の日中には、建築としての美しさと、室内環境としての快適さが必ずしも同じ方向を向かないことを、身体で実感しました。
「これだけガラス張りなら暑そうだな」と頭では分かっていても、実際にその空間へ立つと、見た目の開放感と体感温度の差に驚かされます。

建築は、写真で見るだけでは分からないものです。
柱の大きさ、天井の高さ、光の入り方、音の響き、そして暑さや寒さ。
ガレリアかめおかは、鉄骨とガラスによって生まれる圧倒的な開放感を見せてくれる一方、その大空間を快適に保つ難しさまで、正直に感じさせてくれる建築でした。
開放感を得るために、どこまでガラスを使うのか。
取り込んだ光と熱を、どのように制御するのか。
美しい空間をつくることと、そこで快適に過ごせること。
その両方を成立させる難しさを考えながら、汗をかきつつ館内を歩いた、真夏のガレリアかめおかでした。





