【気まぐれ旅日記⑤】日本一のモグラ駅は、駅そのものが登山だった

こんにちは!長野で注文住宅・デザイン住宅を手がけている「ALOHA100」の中澤です。

皆さんは「日本一のモグラ駅」をご存じでしょうか?

群馬県みなかみ町にある、谷川岳の玄関口・土合駅です。

登山好きの方には有名な駅ですが、この駅、ただの駅ではありません。

谷川岳を訪れる人たちにとっての玄関口でありながら、実は駅そのものが最初の試練なのです。

まず目に飛び込んでくるのが、この特徴的な三角屋根の駅舎。

青空へ向かって伸びる鋭い屋根は迫力満点で、谷川岳の玄関駅にふさわしい存在感があります。

駅舎自体も比較的大きく、山間部の駅とは思えない立派な造りです。

しかし、この時の私はまだ知りませんでした。

本当の土合駅は、ここから始まることを。

駅構内へ入ると、まず現れるのは上りホーム。

線路の向こうには新緑の山々が広がり、とても気持ちの良い景色です。

「なんだ、普通の駅じゃないか。」

そう思った方もいるかもしれません。

実はこれ、土合駅の“表の顔”。

問題は反対側の下りホームです。

案内に従って進んでいくと……

何なんだこれは……

目の前に現れたのは、終わりの見えない巨大な階段。

まるで地下神殿かダンジョンのような光景です。

これこそが土合駅が「日本一のモグラ駅」と呼ばれる理由。

下りホームは、地上から約70.7mも地下にあるのです。

なぜこんなことになったのでしょうか。

そこには上越線の歴史が関係しています。

かつて東京から新潟へ向かう鉄道といえば、長野県を経由する信越本線が主役でした。

しかし、このルートは遠回り。

より短いルートとして注目されたのが、谷川岳を越える上越国境ルートです。

ところが谷川岳周辺は日本有数の険しい山岳地帯。

当時の技術では長大トンネルや急勾配の攻略が非常に難しく、多くの困難が待ち受けていました。

それでも工事は進められ、多くの犠牲と苦労の末に完成したのが全長9,702mの清水トンネルです。

最初に見た上りホームは、この時代に造られたものです。

その後、輸送量の増加に伴い上越線は複線化されることになります。

そして鉄道技術の進歩によって完成したのが、全長13,500mの新清水トンネル。

こちらはより深い位置を一直線に貫いていました。

複線化された以上、当然土合駅にも下り列車用のホームが必要になります。

しかし、新しいトンネルと駅舎との間には約70.7mもの高低差がありました。

結果として誕生したのが、地下深くにホームを持つ「日本一のモグラ駅」だったのです。

そしてようやく到着した下りホーム。

そこは巨大なトンネルの中にぽつんと存在する異世界でした。

昼間でも薄暗く、列車が来るまで静寂に包まれています。

山の奥深くに潜り込んだような、不思議な感覚。

写真では何度も見ていましたが、実際に立ってみると想像以上の迫力でした。

今回は撮影のために下りホームまで下り、そして再び地上へ戻ることに。

当然ながら、帰りは462段を登らなければなりません。

下る時は楽しかった階段も、帰りは完全に修行です。

何度も立ち止まりながら、ようやく出口が見えてきました。

「やっと終わった……」

そう思ったその時です。

目の前に現れたのは、こんな案内板。

改札出口まで後143メートル
階段2ヶ所で24段です。
がんばってください。

思わず笑ってしまいました。

特に「がんばってください。」に強調点が付いているあたり、なかなか煽ってきます。

ここまで462段を登ってきた身としては、

「いや、まだあるんかい!」

とツッコミたくなりました。

結局、改札までの階段数は合計486段。

地上へ戻った頃には足がすっかりパンパンになっていました。

疲れた体を癒やすため、最後は駅事務室を改装したカフェ「どあい」へ。

実はこのカフェ、ただのおしゃれなカフェではありません。

壁や窓口、掲示物などが当時のまま残されており、駅として使われていた頃の雰囲気を感じることができます。

古い建物を壊さず、新しい用途として活用する。

建築好きとしても非常に興味深い空間でした。

壁には当時使われていた連絡先や運行に関する掲示物が残されており、まるで時間が止まったよう。

駅員になった気分で眺めているだけでも楽しく、気付けばあちこち写真を撮っていました。

コーヒーも魅力的でしたが、この日は階段との戦いで汗だく。

迷わずクラフトコーラを注文しました。

一口飲むと、炭酸が体中に染み渡ります。

486段の疲れが一気に吹き飛んでいくようでした。

土合駅は「日本一のモグラ駅」として知られています。

しかし実際に訪れてみると、その魅力は単なる珍駅という言葉では語れません。

谷川岳を貫いた鉄道の歴史。

巨大な土木構造物の迫力。

そして駅舎を活用した新しい取り組み。

鉄道好きはもちろん、建築や土木が好きな方にもぜひ訪れてほしい場所でした。

ただし一つだけ注意点があります。

帰りの体力は、必ず残しておいてください。

なにせ、土合駅最大の難所はホームではなく、その帰り道なのですから。