【建築のひとコマ⑭】川の勢いを受け止める石の階段・牛伏川階段工

こんにちは!長野で注文住宅・デザイン住宅を手がけている「ALOHA100」設計の中澤です。
建物の形や納まりに隠れた工夫を、設計を学んだ視点から紹介する「建築のひとコマ」。
今回は、松本市にある「牛伏川階段工」を紹介します。

森の中を流れる川が、まるで階段のようになっている場所です。

石の段を水が一つずつ下りていく景色は、自然の中につくられた長い階段のようにも見えました。

石碑の奥に見えるのが、牛伏川階段工です。

正式には「牛伏川本流水路」といい、大正時代に造られた砂防施設です。

かつて牛伏川の周辺では山の荒廃が進み、洪水のたびに土砂が下流へ流れ出していました。

施工中や完成当時の写真を見ると、今のように木々に囲まれた景色とはずいぶん印象が違います。

階段状の水路がつくられたのは、川底が水の勢いで削られるのを防ぐため。

約141mの水路に19基の段差を設け、水を少しずつ下流へ流しています。

一見すると景色を楽しむための形にも思えますが、この階段には川を守る役割があるんですね。

近くで見ると、水は石の段を越えるたびに白く広がります。

段差が続くことで生まれる水の流れが、この場所の景色をつくっていました。

この水路は、フランスの山岳地帯にある砂防施設を参考に設計されたことから、「フランス式階段工」とも呼ばれています。

周囲の地形に合わせた階段状の形を、石積みの技術で実現したものです。

そして牛伏川では、水路を整えるだけでなく、荒れた斜面への植栽も行われました。

今、階段工が森の中に自然となじんで見えるのは、川と山の両方に長く手をかけてきた結果なのだと思います。

土地を守るために考えられた形が、時を経て、その土地ならではの風景にもなる。

牛伏川階段工を訪れて、そんな土木の面白さを感じました。

これは完全に余談ですが、昨今の大雨で沢の流れが変わったらしく...遊歩道の一部に水が流れていました。

靴を濡らしたくないなと避けながら歩いていたとき、ふと地面を見ると蜂が!

これは溺れているのか、水を飲んでいるのか...

刺されたくないので写真だけ撮ってそそくさとその場を後にしました。